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ここで待ってるから。
第13章 《沙矢子さんと総一朗君。》月まであと一歩
 冗談じゃない。
 何が、妻の次に君が好きだから…よ。
 ふざけないでほしい。
 私は、貴方が一番だったのに。

 まぁ、人生何年もある中のたった一年の恋。

 はじめての、恋だったのに。


 はじめての恋にはじめての失恋。この状況は、酒に逃げるしかなかった。会社の同僚、橙子と二人で三次会までやって、今は夜中の三時。
 終電なんてとっくに終わり、自虐的に線路沿いをトボトボ二駅分歩いてきた。

 最寄り駅まで、約一時間。ヒールも脚もボロボロになりながらアパートまで歩いていると、街灯の下に何やら塊が落ちている。

 恐々、覗くと茶色い子猫がうずくまっていた。

「ミャ、ミャ。」

「…あら、まぁ。」

 近寄り、見ると怪我はない。弱々しく鳴いている。

「…どうしよう。」

 夜中に一匹で鳴いて、誰を呼んでるの?
 私だって泣きたいよ。
 泣いたら誰か、私を見つけてくれるかな?

 そっと、手を差しのべる。

 小汚い、茶色い毛玉。まだ、目も開いてない。

 小さな身体で、こんなに鳴いて誰を呼んでるのかな。

「…小さいな。震えてるし…さっきより、元気ないかも。」

 子猫を、ハンカチで包む。ほんのりと、体温を感じる。

「どうしようか。…あ、そうだ。」

 確か、駅の方のマンション裏に二十四時間やってる、動物病院あったよね。

 前に居酒屋を一人ではしごした時にみつけた。

「お金かかるかな…。いや、あいつの手切れ金があるから、それで済ませよう。」

 不倫関係でお互いに納得していたけど、最近奥さんが妊娠した。
 結局、あの男は私より家庭を選んでいった。

 三百万円。相場より高いか安いかはわからないけど、あっさり受け取ってあげた。
 私のはじめてが、三百万円とは…。

 動物病院に向かいながら、脚を引きずっている自分に気がつく。

 十五万円のヒールも、三十万円のブランドのバッグも、ニ十万のブレスレットも、私の心なんて満たされなかった。

 どんな、愛の言葉をくれたって私はいつも一人ぼっち。


 動物病院の前に着く。
 明るいグレーの大正時代の洋館みたいな小さな建物。玄関の横に、蔦のからまる看板がある。

『倉城動物病院』

 平日、八時から十九時まで。
 と、夜間二十四時間緊急時対応。

 玄関は明るく、硝子の扉から中の受付カウンターが見える。
 
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