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ここで待ってるから。
第13章 《沙矢子さんと総一朗君。》月まであと一歩
病院から飛び出したものの、足首がまた痛みだす。
駅前の商店街を抜け、小さな公園に辿り着く。
ベンチに座り、溜め息をつく。
結局、隙を作った私が悪い。
買い物帰りの家族。部活帰りの学生。これから、飲みに行く若者達。
何一つ変わらない日常。
取り残された自分。
田舎に帰って、見合いでもして収まるところに収まろうかしら。
脚の包帯を見る。
先生が巻いてくれた包帯。
もう少し出会うのが早かったら、何も迷わず身を任せても良かったかな。
なんだかんだ言っても、不倫相手に未練がある。
はじめて抱かれた人だから。
「…見つけた。」
足元から視線を上げる。
目の前に、先生が立っていた。
「脚、まだ痛そうだからそんなに遠くには行ってないと思って。よかった。」
手には先程の子猫のポスターとガムテープ。
「知り合いの店に貼ってもらおうと、これから行くところなんです。田畑さんも来ませんか?」
「え?私?」
さっきの事はなかったような、涼しい顔。
一人でモヤモヤしてるのが、馬鹿みたい。
「…もう、夕飯の時間だから帰ります。」
「家族と住んでるんですか?」
「いえ。独り暮らしですけど…。」
「そうですか。なら、いっしょに夕飯でもどうですか?」
少しだけ悩み、了承する。
「それじゃあ、ちょっと行きたいお店があるんです。付き合ってくださいね。」
商店街で八百屋と魚屋にポスターを貼り、薬局と小さな教会にも依頼する。
「若先生の頼みなら断れないね。貼っておくよ。」
「若先生、そう言えばうちのリキの予防接種ね…。」
「おや、若先生。タマの爪切りを…。」
よる店、よる所で先生は声をかけられ立ち話をする。私はその間に、指定された場所にポスターを貼る。
街の人、みんな先生を知ってるんだ。それに、『若先生』って…。
「あら、若先生。新しい助手の方?小雪ちゃんが居なくなってから、随分経ちますものね。」
「この方は、この猫を拾った方です。」
最後に漬物屋に寄り、ポスターが終了する。
「田畑さん。これから行くお店が一緒に行きたい所です。」
先生の後を付いていくと、飲み屋街の一角に辿り着く。窓ガラスから中を見ると、カウンターと小さいテーブルがあるバー。
「…ここは。」
ここは、私が良く通う店だった。
駅前の商店街を抜け、小さな公園に辿り着く。
ベンチに座り、溜め息をつく。
結局、隙を作った私が悪い。
買い物帰りの家族。部活帰りの学生。これから、飲みに行く若者達。
何一つ変わらない日常。
取り残された自分。
田舎に帰って、見合いでもして収まるところに収まろうかしら。
脚の包帯を見る。
先生が巻いてくれた包帯。
もう少し出会うのが早かったら、何も迷わず身を任せても良かったかな。
なんだかんだ言っても、不倫相手に未練がある。
はじめて抱かれた人だから。
「…見つけた。」
足元から視線を上げる。
目の前に、先生が立っていた。
「脚、まだ痛そうだからそんなに遠くには行ってないと思って。よかった。」
手には先程の子猫のポスターとガムテープ。
「知り合いの店に貼ってもらおうと、これから行くところなんです。田畑さんも来ませんか?」
「え?私?」
さっきの事はなかったような、涼しい顔。
一人でモヤモヤしてるのが、馬鹿みたい。
「…もう、夕飯の時間だから帰ります。」
「家族と住んでるんですか?」
「いえ。独り暮らしですけど…。」
「そうですか。なら、いっしょに夕飯でもどうですか?」
少しだけ悩み、了承する。
「それじゃあ、ちょっと行きたいお店があるんです。付き合ってくださいね。」
商店街で八百屋と魚屋にポスターを貼り、薬局と小さな教会にも依頼する。
「若先生の頼みなら断れないね。貼っておくよ。」
「若先生、そう言えばうちのリキの予防接種ね…。」
「おや、若先生。タマの爪切りを…。」
よる店、よる所で先生は声をかけられ立ち話をする。私はその間に、指定された場所にポスターを貼る。
街の人、みんな先生を知ってるんだ。それに、『若先生』って…。
「あら、若先生。新しい助手の方?小雪ちゃんが居なくなってから、随分経ちますものね。」
「この方は、この猫を拾った方です。」
最後に漬物屋に寄り、ポスターが終了する。
「田畑さん。これから行くお店が一緒に行きたい所です。」
先生の後を付いていくと、飲み屋街の一角に辿り着く。窓ガラスから中を見ると、カウンターと小さいテーブルがあるバー。
「…ここは。」
ここは、私が良く通う店だった。