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ここで待ってるから。
第13章 《沙矢子さんと総一朗君。》月まであと一歩
 猫を連れた男性の言葉が、胸にひっかかる。

 どういうこと?

 鳴り続く電話の音が頭に響く。

「小雪ちゃんと若先生がこの病院を守ってくれなくちゃ、うちらの大切な家族はどうなっちまうんだか。若先生も小雪ちゃんに謝って、帰ってきてもらえば安泰なんだがね。」

 …なんだ。
 からかわれただけなんだ。
 一年も前から、バーで見かけてたらいい加減声をかけるよね。
 今になって、私に声をかけたのは総一朗君がさみしかったからなんだ。

 それならそれで、私も気が楽。
 
 遊びなんだと割りきれば、たいして傷もつかないし。

 子猫はいつの間にかに眠っている。小さな息遣い、温かい体温。命を感じる。
 一生懸命、生きたいと鳴いていた。
 
 私の心が叫んでいる。誰か、私を助けて。



 子猫をゲージに戻し、自分のアパートの部屋に戻る。あそこにいても総一朗君は忙しいだけだし。

 ベッドに寝転がり、時々総一朗君の声を仕草を思い出す。
 傷心の私には薬だと思った。

 でも、飲み過ぎた薬は毒にしかならない。

 食欲も無く、部屋の暖かさに眠気がおそう。うつら、うつらしているとインターフォンが鳴る。

「沙矢子さん?いますか?」

 ドア越しに総一朗君の声がする。
 ゆっくりと、ベッドから起き上がりドアに向かう。

 でも、今ドアを開けたら自分はどうなってしまうのだろう。
 結局はまた、傷ついて寂しい思いをする。

「…帰って。」

 今はその言葉だけがやっと。

「…沙矢子さん?」

 総一朗君がノブを回す。ガチャガチャと冷たい金属音が部屋に響く。

「…診察に時間がかかって、貴女を放置したのは謝ります。お祖父ちゃんも今朝、腰を痛めて病院にはこれなくて、僕一人しかいなかったんです。」

 少し慌てた口調に、心が揺れる。

「…もう一人。僕の身内の一人が帰ってきてくれたので、時間ももっと作れます。沙矢子さんと会う時間が増えるから…。」

 馬鹿にしないで欲しい。
 身内って。
 それって、奥さんと子供の事なんでしょう?

 時間を作る?
 奥さんと子供がいるのに?

 結局、要次さんと変わらないじゃない。
 自分の欲望の捌け口に、手近な憐れな女を捕まえておけばいい。
 優しくすれば、ノコノコついてくる馬鹿な女。

「…帰って下さい。」

 本当に悲しいと涙はでないんだ。

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