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ここで待ってるから。
第13章 《沙矢子さんと総一朗君。》月まであと一歩

「え?引っ越しするの?」
二、三日考え子猫を引き取り、今のアパートを出ることにした。
会社からも近く、好きなお店が多く気にいった街だったけど。もう、総一朗君の側にはいたくない。
「子猫を拾ったの。一緒に暮らしたいけど、今のアパートは飼えないし。かと言って、あの辺のペット可の物件は駅から離れてるから。」
会社の同僚の橙子と帰宅中、そんな話をする。
「子猫ねぇ。」
子猫は引っ越しの口実に。
「…引っ越しする時、手伝うからね。あと、悩みがあるなら聞いてあげるからね。」
「…ありがとう。」
大学卒業して入社時からの付き合い。お互い、何も言わなくてもわかる。優しい、友人。
子猫を引き取る、事務的なメールを総一朗君に送る。明日、土曜日は朝から物件探して、来週早々、引っ越ししたいな。
駅に着き、馴染みのバーに行く。
金曜日だから、総一朗君は来ない。
もう、来ることはないから今日だけは楽しもう。
「おかえりなさい、沙矢子さん。」
優しい笑顔のマスターが出迎えてくれる。
「うん。ただいま。…とりあえず、ビールとそうだな…今日のおすすめは?」
「そうだね、何点か盛り合わせにしてあげるよ。」
そう言うなり、マスターはハムの塊を削ぎ、チーズや野菜を用意する。
「…ねぇ、マスター。マスターは総一朗君とは昔からの知り合い?」
「うん、そうだね。僕は彼の四つ歳上なんだ。」
「…小雪さん…って。」
「ああ、小雪ちゃん?小雪ちゃんとは僕も同級生で、知ってる。小学校から高校まで一緒だったよ。」
「…そう。」
幼なじみ同士なんだ。
「…小百合ちゃん、は?」
「二人ともあの子を溺愛してたけど。可愛い子だよ。でも、小雪ちゃんが小百合を連れて病院出て行っちゃってね。小雪ちゃん、腕の良い獣医さんなんだけど、意見の相違で…。」
マスターは白いお皿に、アンチョビとポテトのあえ物、ハムとオリーブ、野菜のマリネを少しずつのせる。色とりどりのお皿は食欲をそそる。
「お待たせ。少し、痩せた?」
「ん…。マスターの料理見たら、食欲出た。」
少しずつ、口に運ぶ。
本当に美味しくて。
「うん。美味しい。」
お酒もどんどん進む。何杯飲んだかわからない。
でも、もう、どうでもいい。このまま、お酒に溺れてしまおう。目を閉じて…。
二、三日考え子猫を引き取り、今のアパートを出ることにした。
会社からも近く、好きなお店が多く気にいった街だったけど。もう、総一朗君の側にはいたくない。
「子猫を拾ったの。一緒に暮らしたいけど、今のアパートは飼えないし。かと言って、あの辺のペット可の物件は駅から離れてるから。」
会社の同僚の橙子と帰宅中、そんな話をする。
「子猫ねぇ。」
子猫は引っ越しの口実に。
「…引っ越しする時、手伝うからね。あと、悩みがあるなら聞いてあげるからね。」
「…ありがとう。」
大学卒業して入社時からの付き合い。お互い、何も言わなくてもわかる。優しい、友人。
子猫を引き取る、事務的なメールを総一朗君に送る。明日、土曜日は朝から物件探して、来週早々、引っ越ししたいな。
駅に着き、馴染みのバーに行く。
金曜日だから、総一朗君は来ない。
もう、来ることはないから今日だけは楽しもう。
「おかえりなさい、沙矢子さん。」
優しい笑顔のマスターが出迎えてくれる。
「うん。ただいま。…とりあえず、ビールとそうだな…今日のおすすめは?」
「そうだね、何点か盛り合わせにしてあげるよ。」
そう言うなり、マスターはハムの塊を削ぎ、チーズや野菜を用意する。
「…ねぇ、マスター。マスターは総一朗君とは昔からの知り合い?」
「うん、そうだね。僕は彼の四つ歳上なんだ。」
「…小雪さん…って。」
「ああ、小雪ちゃん?小雪ちゃんとは僕も同級生で、知ってる。小学校から高校まで一緒だったよ。」
「…そう。」
幼なじみ同士なんだ。
「…小百合ちゃん、は?」
「二人ともあの子を溺愛してたけど。可愛い子だよ。でも、小雪ちゃんが小百合を連れて病院出て行っちゃってね。小雪ちゃん、腕の良い獣医さんなんだけど、意見の相違で…。」
マスターは白いお皿に、アンチョビとポテトのあえ物、ハムとオリーブ、野菜のマリネを少しずつのせる。色とりどりのお皿は食欲をそそる。
「お待たせ。少し、痩せた?」
「ん…。マスターの料理見たら、食欲出た。」
少しずつ、口に運ぶ。
本当に美味しくて。
「うん。美味しい。」
お酒もどんどん進む。何杯飲んだかわからない。
でも、もう、どうでもいい。このまま、お酒に溺れてしまおう。目を閉じて…。

