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ここで待ってるから。
第13章 《沙矢子さんと総一朗君。》月まであと一歩

〈総一朗の領分〉
「おーい。酔い潰れた美人さんが一人いるんだけど。お持ち帰りしちゃうよ?」
金曜日の夜、マスターから電話をもらう。
本当に持ち帰る人だから、気を付けないと。
いそいで店に駆けつけてみれば沙矢子さんが、酔っ払って爆睡している。
「結構、飲んでたよ。」
カウンターにうつ伏せになり、眠っている。
目元に涙の痕がある。
そっと、指でなぞる。
一年前。ふっ、と目の前に現れた。いつも土曜日の夜。マスターと笑いながら、沙矢子さんはそこにいた。
寂しそうな顔。楽しそうな顔。怒っている顔。嬉しそうな顔。
まるで、月のように表情を変える。
最初はその存在に必然は感じなかった。
いつのまにか、夜道を照らす月明かりの様になっていた。
ちょっとした、神様のイタズラか、気まぐれか。沙矢子さんが子猫を拾った。小さな命を助けたいという真剣な眼差しに、心を奪われていた。
そっと触れた脚にドキドキしてしまった。
この声で囁かれたい。
唇を味わいたい。
手で触れて、抱いてみたい。
抱き寄せてみれば、あまりにも細く繊細で男慣れしていない身体だった。
触れれば触れるほど、快感に素直に従う。
もっと、哭かせたい。
なんて愛しいんだろう。
小雪ちゃんと小百合を僕の嫁と子供と勘違いしている。
本当に困った人だ。
小雪ちゃんが動物病院を継ぐものとばかり思っていた。でも、人の人生と言うものは真っ直ぐとは限らない。
バーから、抱きかかえ自分の部屋に連れていく。
ベッドに寝かせ、服を脱がせる。
白い肌にキスを落とす。
抱きしめて、体温と感触を楽しむ。
目を覚ますと、目の前に沙矢子さんがいた。
睫毛を震わせ、困った顔をしている。
もう、離さない。
けっして、離れない。
「子猫と一緒に、僕と暮らしませんか?」
沙矢子さんは目を真ん丸にしている。
「お祖父ちゃんと小雪ちゃんは裏のマンションに住んでいて、今この病院には僕だけなんです。古い家だけど、部屋もあるし。」
耳元に、囁く。
「毎日、沙矢子さんを逝かせてあげますよ。アンアン言わせて、ヒーヒー哭かせて寝かせませんから覚悟してくださいね。」
返事は聞かない。決まってるから。
〈沙矢子さんと総一朗君〉おしまい。
「おーい。酔い潰れた美人さんが一人いるんだけど。お持ち帰りしちゃうよ?」
金曜日の夜、マスターから電話をもらう。
本当に持ち帰る人だから、気を付けないと。
いそいで店に駆けつけてみれば沙矢子さんが、酔っ払って爆睡している。
「結構、飲んでたよ。」
カウンターにうつ伏せになり、眠っている。
目元に涙の痕がある。
そっと、指でなぞる。
一年前。ふっ、と目の前に現れた。いつも土曜日の夜。マスターと笑いながら、沙矢子さんはそこにいた。
寂しそうな顔。楽しそうな顔。怒っている顔。嬉しそうな顔。
まるで、月のように表情を変える。
最初はその存在に必然は感じなかった。
いつのまにか、夜道を照らす月明かりの様になっていた。
ちょっとした、神様のイタズラか、気まぐれか。沙矢子さんが子猫を拾った。小さな命を助けたいという真剣な眼差しに、心を奪われていた。
そっと触れた脚にドキドキしてしまった。
この声で囁かれたい。
唇を味わいたい。
手で触れて、抱いてみたい。
抱き寄せてみれば、あまりにも細く繊細で男慣れしていない身体だった。
触れれば触れるほど、快感に素直に従う。
もっと、哭かせたい。
なんて愛しいんだろう。
小雪ちゃんと小百合を僕の嫁と子供と勘違いしている。
本当に困った人だ。
小雪ちゃんが動物病院を継ぐものとばかり思っていた。でも、人の人生と言うものは真っ直ぐとは限らない。
バーから、抱きかかえ自分の部屋に連れていく。
ベッドに寝かせ、服を脱がせる。
白い肌にキスを落とす。
抱きしめて、体温と感触を楽しむ。
目を覚ますと、目の前に沙矢子さんがいた。
睫毛を震わせ、困った顔をしている。
もう、離さない。
けっして、離れない。
「子猫と一緒に、僕と暮らしませんか?」
沙矢子さんは目を真ん丸にしている。
「お祖父ちゃんと小雪ちゃんは裏のマンションに住んでいて、今この病院には僕だけなんです。古い家だけど、部屋もあるし。」
耳元に、囁く。
「毎日、沙矢子さんを逝かせてあげますよ。アンアン言わせて、ヒーヒー哭かせて寝かせませんから覚悟してくださいね。」
返事は聞かない。決まってるから。
〈沙矢子さんと総一朗君〉おしまい。

