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セルフヌード
第4章 光と闇


「……違ったらすみません。美優さんって、◯◯学園高等部の第◯◯期卒業生ですか?」

「っ……」

「やっぱり!」

 美優はかおりを凝視した。

 鏡越しで──…見目からして美優とは無縁の世界の住人であろう店員の目に、懐っこい気色が顕れていた。

「クラス同じだったの知ってる?守山かおり」

「あっ」

「グループ違ったもんねぇ。相田さんは真面目だったし、私なんて眼中になかったでしょ」

「そんな、こと……」


 苦い記憶が蘇る。

 クラスでひときわ目立っていた、スクールカーストの上層階級。かおりはそこに所属していた。美優は言わずもがな最下層。

 かおりのような少女とは、目を合わせるだけで噛みつかれるか、石になる。

 少女だった頃の美優は、半ば本気でかおりをメデューサとでも思っていたのかも知れない。


「相田さん、変わったね。可愛くなって羨ましい」

「……そんなことないよ。今は、それに、小木曽」

「結婚したのっ?ごめん、知らなくて。薔薇色じゃない。ということは嶋入さんとは?」

「──……」

「シークレットなら良いの。彼女、業界で有名だから、つい。モデルとかで知り合ったの?」

「ううん」

「そっかー。うん、すごいすごい。ねぇ、ここだけの話、……ちょっと整形した?」

「──……」


 嫌な気持ちはしなかった。

 かおりのように生まれつき垢抜けていたような女からすれば、美優など少し背伸びした芋臭い元同級生に過ぎない。それなのに、こういう時こみ上げるはずの類いの反感に、胸が煮えくり返ろうとしない。
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