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セルフヌード
第4章 光と闇
初めての手作りケーキを食べて、初めての場所を開かれた。そして初めての夜の公園。
日頃敬遠していた恋人達より盲目的な、野生のごとき閨事に昇りつめて、美優は女の潤みになつみを求めた。
囚われたかのように注がれてくる愛言(めでごと)、そしてキス。
なつみの指をがっつくように迎え入れた美優の膣内(なか)は、狂おしいほど悦び喘ぐ。
公園は、嫌いだ。嫌いだった。
昨日までとは違う。美優は新たな景色に守られながら、何度も何度もエクスタシーにさらわれたあと、優しい恋人の腕に抱かれた。…………
「今度、個展やるの」
「そうなんだ。行きた──」
「モデルお願いしたいんだ」
「え?」
「美優に。モデル」
「──……」
まだとろけていた。理解力が正常に機能しない。
「可愛い洋服用意しとく。総子さんの勧めでね、こういうのはもうしないと思ってたのに、……美優が関わってくれたら、出来る気がして」
「でも」
「顔は出さないし、身体も。美優のこと全部見て良いのは、私と良って男だけ」
「…………」
美優は頷いていた。
とり違いでなかったことだけは理解出来た。どんな風に言葉にして頷いたかは、思い出せない。
「ありがと。……お礼じゃないけど、もう一個、プレゼントあるんだ。手、出して」
「…………」
美優の片手が、なつみの温度に包まれた。
小さく、金属らしい何かが手のひらに収まる。
片手を開けて、目を凝らす。
「これ……も、もらえない。……」
「必要ないけど、持ってて欲しいの。気分だけでも、美優が私のだったらなって。……ほんと、気分だけ。他の子に渡したことはないし、親が来てる時だと面倒だから、美優も、持ってるだけにして」
「…………」
美優は合鍵を手のひらに握る。
幸せな家族がぬくぬくと暮らしているのだと思い描いていた、優美な豪邸。
少し前まで住人と顔を合わせることさえなかったのに、今、鍵まで握り締めている。
愛してる。
…──信じてくれないかも知れないけれど、心から。
口に出来る資格はないと思った。