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セルフヌード
第4章 光と闇
* * * * * * *
週末、美優は良とテーマパークへ出掛けた。
西洋の町がそのまま運び移されてきたごとくの娯楽施設は、賑やかなアトラクション広場を外れると、異国情緒溢れる散策地が続いている。
美優は十七年連れ添ってきたパートナーと並んで、民家や露店、花壇や木々に彩られた石畳の道を歩いていた。
「懐かしー。高校ん時、お前と出掛けた二度目に来たよな。色々変わってる。年もとるわ」
「そうね。敷地も、少し拡大されたのかな。立ち入り禁止の山道とか見かけなくなったかも。良くんあの時、パレードの時間すごい速さで人混み縫ってくれたね。疾風みたいだった」
「お前ちっせーもん。見えなくちゃもったいないじゃないか」
「カッコ良かったよ。私なんかのために、あんなに走ってくれる人、いないと思ってたから。嬉しかった……忘れられないの」
同じ高等部に通っていた頃、美優と良の周りには、自然と魅力を振り撒いていた女子逹がいくらでもいた。
そんな中、良は花達に埋もれていた美優を掘り出し物を掬い上げるようにして見つけた。
ボードゲーム研究部の、目立たない下級生。しかも器量は甚だ劣る。
良にとって、美優はそれだけの存在だった。
それだけの存在だったはずの美優が、良の隣で、初めて大切にされる幸福を覚えた。空気となっていた美優をこの世に繋ぎとめてくれた人。
ここを訪ねると思い出す。
化粧もしないで、野暮ったい格好でデートに挑んだ美優の隣で、一日中、良はたくさん笑ってたくさんはしゃいだ。美優の話を真剣に聞き、美優の行きたいアトラクションに行きたがった。…………