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セルフヌード
第4章 光と闇
「美優って、美しくて優しいって、書くよな」
「うん」
「そのままだと思ったんだよ。お前見てると、名前は人を表すんだなって」
「……良くん、熱?」
「違ぇよっ、真面目に聞けよ」
「──……」
老婦人と老紳士が、美優達を追い越していった。
元気な二人だ。
老婦人が老紳士の腕にまとわって、若気にほだされてじゃれ合うカップル達と変わらない。
「十五にもなって、化粧っ気ねぇし、スクールバッグにぬいぐるみもつけてない女子なんて、美優だけだった。ゲームに勝っても全然喜ばねぇっつーの?すみませんすみません、みたいな。多分、飾らなさすぎるとこに興味惹かれた。綺麗って、生まれたままの状態に近いことを言うんだろうなって。髪染めたり、減量したりして、つくるものじゃない。親にもらったものをそのまま保ってるようなやつが綺麗なんだよ。……あの頃のお前みたいに」
「──……」
「あっ、だからって、違うぞ?!最近の美優まじ可愛くて、化粧変えただろ?それはそれで大人なんだし、ほら、俺も腹筋やってるからな。うん、今の美優くらいじゃねぇと、自慢のパートナーだって言えない。けど、……」
良の剽軽な面差しに、しかつめらしい情緒が落ちた。
「お前、中身は変わってねぇわ。努力してんのかしてねぇのか分かんないほど、お高くとまったりしねぇもん。家事やって、美味い飯作って、最高の笑顔でお帰りって言ってくれる。疲れた顔見せねぇで。……美優といると、十七年も経った感じがしねぇ。初恋中の童貞気分のままでいられる」
良のおどけた口振りに、美優はつられて噴き出した。