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セルフヌード
第1章 秘密の快楽
物心ついた頃から、鏡に棲まう女の顔に嫌悪感を催していた。
細い目許に左目だけうっすらと二重がかった目蓋、ぼんやりした目つきの所為で、授業中は教師達にのべつ睨まれていた。
頰はふっくら肉づいており、おとがいに下るほどたくましい。唇はぽってりと厚い。いかにも鈍い顔つきだ。お陰で平穏な青春時代を過ごした。他人の恋人を誘惑しただの、猫かぶりだの、美優は悋気の矛先だけは向けられない少女だった。
そして、今でこそ晒せる裸体を維持している肉体は、思春期までふくよかでもあった。十キロの減量に成功しても、頰の肉だけは落ちなかった。
セルフヌードは、良の留守中、一番の楽しみだ。
みゆとして。軽薄なあばずれとして。
例のブログに手間暇をかけている間だけ、暗い雑念から解放された。
美優のあられもない身体のパーツは、液晶画面の向こうにいる赤の他人に吟味され、観察され、評価される。
愛に飢えるだけの愛も知らなかった、同じ部活の元上級生を例外にはねれば、たった一人の関心も引けなかった醜い女は、インターネットを通して初めて、褒められるという充足感の味をしめた。