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セルフヌード
第4章 光と闇

* * * * * * *

 離れていた歳月など関係なかった。

 今でも変わらず親友と呼べたりのを駅まで送り届けた後、なつみが引き寄せられるようにして訪ったのは、市外の墓地だ。


 忘れ難い女(ひと)の永眠する花園。


 安らかな花園であろうことを願わずにはおけない、十字を飾った聖なる墓石は、数多の霊魂の寝床の園より上方に外れた平地にあった。


「…………」


 無の霄漢。月光。

 こんな時間でもなければ彼女の名残に触れられない。


「──……」

 呼びかけた声に返事はなかった。


「神頼みなんて、気味の悪いことを」

「っ……」


 ねぶるような女の声が、なつみを祈りから引きずり戻した。


 楽園を囲繞している白い柵を越えた女の腕が、後方からまといつく。

 女はなつみを羈束するや、胸に組んでいた結び目をといた。


 月明かりが薄れてゆく。ひとときの、光の残滓が──…。


「神にも見放されたお前が。それとも何、そこに埋まっているうじ虫の魂でも呼び出して──」

「何故……」

「私がここに来るとおかしい?」


 女の手が腹を這う。太ももに下っていった圧力が、スカートの裾をはだき上げ、安物の人形でもいじる具合にドロワーズから伸びた肉叢をまさぐる。

「なつみ、……」

「っ……」

「この女とお前の所為で、私の人生は滅茶苦茶。この女は死んで当然。あんな天罰で済むなんて、つくづく悪運の強かったこと」

「っ……ぁ……ああ……」


 麻縄がブラウスに巻きついた。

 女の手がなつみの上体を行き来する。

 纏縛がコットンを押し上げていた膨らみを誇張し、なつみの腕の動作を奪う。

 女が縄の端を引く。なつみの身体が大樹の裾にくずおれた。
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