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セルフヌード
第4章 光と闇
* * * * * * *
モデルの話を受けてから、二週間の猶予もなかった。
美優は賞味十日間、実直に自分の体型と向き合った。
今のままの美優が良いだの、これ以上小さくなったらイカになるだの、なつみにさんざっぱら冷やかされた。さんざっぱら冷やかされながら、美優ははるこに選んでもらったヨガやらエクササイズやらの書籍を片手に、なけなしの努力を積み重ねたのだ。
「まさかみーこがモデルなんて……」
「自分でも吃驚してる」
「そのバイト、本物?『少女crater』の嶋入なつみでしょ?みーこの言ってるのが本物なら、みーこ、別の意味ですごいもの引き受けちゃってる」
「そうなの?」
「雑誌だけでもあちこちで話題になってる。さすがに私も覚えたわ。知らないの?ご近所さんなのに」
「…………」
なつみとは、昨日も一昨日も、少なくとも三日に一度は会っている。
会っている分、美優は疎くなっていた。
こそこそ調べなくなくなったところがある。目に見えている彼女で十分だった。
「とにかく、大丈夫。今日もなつみが近くまで迎えに来てくれるから。それに、スタッフさんも……私があんまり人前に出たくないの知っててくれてて、最小限にしてくれて……」
「モデルはお姫様扱いって本当なんだ」
「そんなことないよっ。はるこってば雑誌の鵜呑みはダメよ。私なんかより撮ってくれる本人が断然お姫──」
美優の手許でスマートフォンが新着メールを通知した。
「あっ、着いたって。はるこ、ほんとにありがと。ウエスト二センチ縮められたの、はるこのお陰!」
「はいはい、急に色気づいちゃって……。私仕事に戻るから、みーこも頑張ってね」
美優ははるこに手を振って、紙の匂いの染みた売り場を後にした。