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セルフヌード
第4章 光と闇



「美優」

「…──っ、なつみ?!」


 美優は幻でも見たかと思った。

 見慣れた輸入車。
 運転席から出てきた女は、なつみであって別人だった。

 端麗な顔かたちは疑いようなく昨日も美優を躍らせた女だ。
 ただ、なつみの腰まであった茶髪は伸びかけの短髪と呼べるほどに切られていた。化粧も、持ち前の可憐な顔立ちを相殺している。その装いは、白いシャボ付きブラウスにブルーグレーのジャケット、深い青のロングパンツはゴシック調のクロスのジャガードで仕立てあって、胸には赤い薔薇のコサージュ、なつみ自身の腕にも大輪の薔薇が抱えてあった。


「はい」


「…………」



「…………。……え?」


「それだけ?もっと驚いてよー。ねっ、どう?どきっとした?こういうのどう?」

「──……」


 美優は説明し難い焦燥を覚えながら、花束を受け取る。


「有難う。……イメチェン?」

「一度やってみたかったんだ。この前ロリィタと皇子特集の撮影があって、この服、乙女を迎えに行くのになんか合ってない?即買いしちゃった」

「──……」


 分かっていた。胸裏を引きずる落ち着かなさは、多分、女特有の欲望がもたらすものだ。

 なつみにエスコートされながら、美優は助手席に落ち着いた。甘くエロティックな匂いをまとった大輪の薔薇を膝に抱く。
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