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セルフヌード
第4章 光と闇
極上にロマンチックなホテルの最上階。
スイートルームに撮影ステージを調えていたのは、一ヶ月ぶりにまみえるなつみのスタイリストの友人と、それから初対面の女性スタッフが二人だ。
美優はなつみに紹介されて、美術、照明を主に任されたという、ありさと菜穂と名乗る二人と定型的な挨拶をした。
「わっ……」
なつみが美優に準備していた衣装、それは、夕まぐれの空を刷く薄紅をまるごと写し取ってきたかのごときのウエディングドレスだ。
星屑を織り込んだようなレースのフレンチスリーブのフリルが揺れる身頃から、波のように広がるティアードスカート。幾重にも重なる大きなシフォンの花びらに、極彩色のブリザードフラワーがアシンメトリーに流れる。
優雅なプリンセスラインのドレスに身を包んだ美優を、花蓮の魔法が一夜限りのプリンセスに仕上げていった。
そして美優はきらきらきらめくヴェールを被って、耳や首元を大粒の星屑で明るめられると、九年振りにブーケを持った。
「お似合いです!」
「おおっ、ピッタリ!」
「花嫁さんっていうか、お姫様です小木曽さん!」
示し合わせたような賛辞の嵐にたじろぎながら、美優はなつみに寝台まで誘導された。
天蓋からオーロラのように下りたカーテンが、
ふわふわと二人を包み込む。
「コンセプトは光。希望。……美優は何かに囚われているんだけど、迎えに来てくれる人がいる。その人を想って待ってるの」
なつみが美優に光沢のリボンを巻いていく。
美優の手首が左右交差して左耳に持ち上がると、リボンの端は天蓋を寝台の柱に結びつけられた。
花蓮とありさがシーツに花びらを散らしていった。
ドレスを飾るブリザードフラワーの色彩と、美優を捕らえる花の欠片が妙なるコントラストを生む。