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セルフヌード
第4章 光と闇





「お疲れ様」

 グラスが星を散りばめていた──…。

 シャルドネに痺れかけていた美優の耳に、酔いも覚めるような刺戟が触れた。


「ごめんね、薔薇、崩れてたでしょ」

「全然。美優の匂いが染みこんでて、くらくらしちゃった」


 美優の指からグラスの脚が抜け出ていった。

 なつみの花びらのような唇に、薄いガラスがキスを受けて、金色の液体が飲み込まれてゆく。


 美優の手許にグラスが戻った。なつみがボトルを持ち上げて、星を散らす盃を満たした。


 綺麗だ。

 しとりを吸った真珠肌に、美優は嫉妬を超えた跼蹐を抱く。
 湯上り特有の血色は、なつみこそ花びらを閉ざしでもした感じがある。美優を真摯に見つめる夜空の双眸に、水気の残った茶髪が淡い情感を落とし、誘惑的な肢体がまとうのは、頻りと雑貨屋で見かける類の可愛らしいナイトウェア。

 部屋にバスローブがあって良かった。

 一面の薔薇がバスタブを埋め尽くしていた。完膚なきまでに贅の尽くされたスイートルームに相応しい湯浴みを楽しんだあと、美優は持ち込んできたスウェットの上下をバッグに押し隠したものだ。


「部屋の借りれば良かったかな。この髪でこの寝間着じゃダサいかも」

「そう?」

「さっきまでカッコイイ皇子様だったんだよー。お姫様的にはどう?」

「どうって言われても……私は、……」


 美優は、息が上がりかけるのを何度となく戒める。

 なつみの眼差しに弱い。

 車での冗談はあながち否定出来なかったかも知れない。
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