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セルフヌード
第4章 光と闇


「…………」

「私、何か言った?」

「ううん。美優が女の子を褒めるの、珍しいなと思って」

「──……」


「美優が一番綺麗だよ」


「…………」


「あ、こっちはね」…………





 なつみは在廊時間の大半を、美優につきっきりでいてくれた。

 いつかの皇子スタイルとは一変して、美優のよく知るなつみの姿だ。

 緩やかなウェーブを描く、腰まである長い茶髪。花蓮の腕は、やはり秀抜らしかった。ただでさえあでやかな容姿をいやが上にも華やがせるエクステは、それだと聞いていなければ甄別出来なかったろう。

 周囲の、なかんずく若い男女の目が美優をなじる。

 おりふし彼らは全霊からプレッシャーを訴えながら、なつみにしずしず声をかける。そうして感無量になっては去り際、美優にある種類の感情を叩きつけた。



「ここからが、今回のメイン」

「あっ……」


 最後の一角が美優の視界に飛び込むや、穴を掘って入りたくなった。

 続けざまに跪いて拝み倒したい衝動が、総身を駆け抜けてゆく。


「あれ……あれっ……」

「今更驚くー?使うから撮ったんじゃん」

「でもっ……えっ?……えっ、……」


 異彩を放っていた。

 最奥にあたる一面だけ白い薔薇の壁紙が巡らせてあり、精巧なアーチや花のオブジェが、ここで見られるポートレートをいかにも要らしく引き立てていた。


 ロカイユ風装飾のパネルの中で、幻想的なドラマを演じるパステルピンクの花嫁。

 どこからか差し込む鮮烈な光が花嫁の顔を覆い、あるいはドレスのブリザードから舞い上がる炫耀がその素性を隠す。

 シャンデリアの光、そして影さえ、一枚の絵を補翼していた。


 表情こそ覆遮されても、花嫁がいつかまみえる運命に焦がれ、花とリボンの羈束を甘んじて受け入れ、最後には微笑む情緒の変化が溢れこむように写してあった。
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