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セルフヌード
第4章 光と闇

* * * * * * *

 たえが帰っていった後、美優達も解散した。


 なつみは市内のスタジオへ、美優は私宅へ──…。



 アパートに戻ると、良がリビングのテレビをつけていた。


 テーブルにラップのかかった夕餉が並んでいた。

 二日ほど前、美優の漬けた漬物もあった。良のアレンジでライスサンドになっていた。


「お帰り」

「ただいま」

「元気なくない?そうだ、お義母さん行ったか?」

「うん」

 前者の労いをあしらって、美優は隅にバッグを下ろした。



 別れ際、なつみはさんざっぱら美優を慰撫した。



 美優が落ち込んだのは、一度でも良と見た夢が成就しないからではない。たえの期待に応えられないからでもなかった。


 なつみに言いたかったこと。

 美優は、一つとして声に出せなかった。



「美優」

 斜め後ろから肉厚の腕が美優に絡みついてきた。

 男特有の匂い。

 美優の知る二つの抱擁、良はなつみより体温がある。


「帰ってきてくれて嬉しい」

「当たり前だよ。今日は、帰るって言ってたじゃない」

「そうだけど。嬉しいじゃないか。……待ってる人が、ちゃんと帰ってきてくれるって」


 ぎゅ…………


 良の腕から美優を包むシフォンがほのかに盛り上がる。


 なつみがプレゼントしてくれた夜空のワンピース。

 初恋のような切なさに顫える胸を飾ったレースが、寂しげな抱擁の陰で皺を刻んだ。
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