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セルフヌード
第5章 少女と被虐
「その人が、もし私の友達なら、悩んでいる内に別れるべきだってアドバイスする」
「──……」
「そういうのって連鎖するでしょ。言い方悪いけど、結婚とか、子供が出来たら尚更、その子も可哀相だもん。良先輩の会社の人、今は未練あると思うけど──」
「あ、違うの。結婚や子供はなし。二人とも女の子なんだって」
「それでも、かな。愛で傷は癒せない。お相手さんは、ずっと抱えてくことになると思う。そういう人に限って外面は良いんだよね。攻撃的なところはあっても、異常なくらい優しくなったり。……結局、色々背負わされるのは恋人。いつまでも普通にはしていられないと思う。私は、友達にわざわざ面倒なものを引き受けて欲しくないな。…──って、みーこが言ってるのは顔も知らない人のことだけど」
「──……」
美優の純朴な友人は、明達な分析力の持ち主でもあった。
一心不乱に漆黒を駆けた美優の足は、あるじをあるべき場所へと逃した。
なつみの美しさが疎ましかった。煩わしくさえあったのに、惹かれていった。
美優を包んでくれたものが、美優に見せてくれた空が、きららかで、天への扉のようだったからだ。澄みきっていた。
天衣無縫の女は当然、完膚なきまでに清澄であるはずだった。
美優は、所詮、なつみの顔が好きだったのだ。
一度でも拒絶した。
見限ったのは美優ではない。なつみこそ、今頃、美優に幻滅しているだろう。
美優の胸を静かに蔓延る黒いもの。
相反する感情が、美優の醜い心根を暗に物語る。
愛をささめき合いながら、美優からなつみに触れられなかったもどかしさ。不安。
あれだけ焦がれていたのに。
愛だの恋だのを選ぶのに、覚悟は、二の次だ。二の次のはずの覚悟のために、美優は思考をやめられない。