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セルフヌード
第5章 少女と被虐
まめな手料理といかにも上等なシャルドネワインが夕餉を彩るリビングで、総子が雑誌のページを操っていた。
不機嫌を絵に描いた女が目を通しているのは、なつみが毎号携わっているファッション誌だ。
「私、毎晩なつみの面倒ばかり見ていられないの。それでも何のために来てるのか、少しは考えて行動して」
「ごめんなさい。……」
なつみは総子の隣に腰を下ろす。
ソファを踏んだ傷口が、遠くで唸った。久しくまともに動いた身体は、些細なところで疼痛を思い出す。
「彼女は?」
「眠っています」
「それが良いわ。……いただきましょ」
総子がペットボトルを取り上げて、グラスの片方に紅茶を注いだ。アルコールはほぼ飲めないことをようやく覚えてくれたらしい。
「乾杯」
「乾杯、……」
「個展お疲れ様。大盛況だったわね」
「あ、その乾杯なんですね」
なつみは追って謝辞を添え、紅茶を啜る。
こうしていると、数年前が思い起こされてくる。
総子のアシスタントを務めながら写真を学んでいた頃、彼女が個展やら写真集やらで一花咲かせる度に、なつみは打ち上げに誘われた。スタッフらと開く宴とは別に、師弟水入らずで祝った。
総子は美優の写真を評論した。冷静に、時に感情的に。それから彼女自身の仕事に関する話もした。
なつみは温かい手料理を味わいながら、総子の話をを聞いていた。