この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
セルフヌード
第6章 最愛
暫しの間、美優は眠らされていた。
診察室で目が覚めて、看護師に聞かされたところによると、軽度の恐慌状態に陥っていたという。
搬送後、なつみの意識はすぐに戻った。
多量の出血は錯覚だった。ガラスと見られる傷は浅く、ミネラルウォーターが血液を広げたのだろうという。現場にいた看護師達が、医師に報告したことだ。
「検査の結果、破片も見つかりませんでした。数日経てば塞がるでしょう。古い傷のことはご存知ですか?」
「はい、……」
「一時的な意識不明の原因として考えられるのは、肉体内部の損傷です。深傷に至らなかったのは、それで手が鈍ったからでしょう。不可解なのは、投薬の形跡がありながら、わざわざ手首を……というのが……」
「どういうことですか?」
美優は雑駁とした反感を抑え、医師を見据える。
なつみに話を聞くまでは、自殺と決めつけたくはない。
彼女に限って可能性は低い。思い起こせば美優が初めて私宅に泊まった夜から、時折、なつみは不調をちらつかせていた。今日も、失神が引き起こした事故だったのではないか。
「失礼ですが、貴女は?」
「あ、……その……」
「私達にはプライバシーを守る責任があります。嶋入さんとどのようなご関係でしょうか」
「…………」
家族と呼んだことはない。さりとて事実を口にしても、所詮、不倫ととられるだけだ。
美優にこそなつみを知る権利があるのに。