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セルフヌード
第6章 最愛
「パートナーです」
半分事実で半分嘘だ。
医師は難色を示しながらも頷いた。
「免疫機能が著しく低下しています。特殊な薬品が作用しており、細菌に対する抵抗力も皆無に等しい状態です。治癒したばかりの傷口なら、僅かなショックでぶり返すでしょう。…──断言は出来ませんが、少なくとも七年、定期的に投与されています。心当たりはありませんか?」
それから美優が聞かされたことは、なつみから聞かされなかったことだ。
常識では考えられない。
終始事務的に構えていた医師でさえ、話が核心に迫ると苦虫でも噛み潰した顔でまごついた。
「脱法に挙げられる薬ではありません。解毒を続けていれば、私生活には障ることもないのですが……」
「治るん……ですか……」
「治療や手術で取り除くことは不可能です。一つだけ、この長期間、ここまでの症状で済んでいたのは、────」
…──膣分泌液にのみ、溶けて流れてゆく成分だから。
たった一度きり、医師はそう説明した。
なつみは美優に出逢ってから、可愛がっていた女達を遠ざけた。
解毒の術が医師の話す通りだとすれば、害毒は溜まっていったはずだったのだ。投与していたのは、おそらく例のなつみの叔母だ。
何も知らないで独占欲をなつみにぶつけた。
美優とて、良となつみに言えない情事を重ねているのに、自分のことは棚に上げていた。
謝って済まされることではない。
なつみのことだ。美優が自責したところで、きっとまたわけの分からない自論を展開し、笑い飛ばすだけだ。