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セルフヌード
第6章 最愛
* * * * * * *
シャワーを出ると、《ひかりのそら》理事の男がノートパソコンから顔を上げた。
生殖器が機能しているのも不思議なほどに老いた顔に、野生的な光が灯る。
「……何をもったいつかせている」
りのはバスローブの紐をとく。
夜闇にぼやける白い裸体が、修造の目に現れた。
修造が寝間着を履いた膝を叩いた。
りのは修造に跨って、命じられるままキスを押しつけ、しわがれた手を乳房へ導き、忠誠心を口舌にした。
修造はさんざっぱらりのの身体をまさぐった。
跪き、りのは雇い主の寝間着のボタンを舌と唇だけで外しにかかる。その間、恭しく、愛おしそうに、彼の膝や脚を撫でた。
「はぁっ、……」
「早くしろ。朝になるぞ」
「申し訳ありません……」
愉快な口調に続いて、修造の喉が朗らかに鳴った。
「りの」
ボタンを唾液で滅茶苦茶に濡らしながら、りのは頭上を降り注ぐ声に耳を傾ける。
「真知子と別れようと考えている」
「──……」
「それからお前の父親のことだ。今後はお前に縁のない人間として、扱おうと考えている」
「…………」
「理解出来んか?」
「──……」
りのははだけた寝間着に覗いた肌に口づけながら、嗄れた声を聞いていた。
「わしがお前の父の立場を危うくしたのは、お前が知ってはならんことを知ったからだ。わしはお前にわしのものになることを条件に、一切を咎めず、あの男の職も解かないでおいた。しかし、……」
春先の記憶がりのに押し寄せた。
修造は海外でも積極的な慈善家として名が知れている。
りのは彼の児童養護施設に勤務しながら、長きに渡って、その理念を誇りに思っていたものだ。しかし、ある時、修造が置き忘れていった書類を拾った。書類は、りのの知らざる修造の顔──…善良な役員のあらゆる不正を証拠づけていた。