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セルフヌード
第6章 最愛

* * * * * * *

 硬いシーツにくるまれて、消毒液のアルコール臭が美優の鼻に不快をきたした。

 遠くにブーケのフレグランスが香る。懐かしい、胸が迫り、腹の奥の敏感なところがじんとする匂いだ。


 ひんやりしたシーツをよけるのが怖い。

 現実を逃れてきたはずだった。正確には薬で眠らされた記憶がある。薬で眠らされなければならなかったほど、受け入れ難い現実が美優に舌なめずりしていたからだ。



「ん……」


 さらっ…………


 抱き締めたシーツを握り直した美優の髪を、誰かの指がひと束掬って宙に流した。


「──……」


 どこかで感じた眼差しだ。指先も、美優のよく知る優しさを連れている。


 薄目を開けて、首を動かす。


 長い茶髪に端正とれた顔かたち、洋服は、美優の知る彼女にしては垢抜けない。シンプルな青のカットソーにレースも何も付いていないキュロットスカート。


 美優は、寝台の側に腰を下ろした女を暫し眺めていた。



「おはよ」

「……おはよ、じゃ……ないわ」

「だね。こんな時間だし。住所から番号調べて、美優の家には連絡したから。私の家に泊まってることになってる」

「…………」

「お姫様のお目覚めに、こんな格好でごめんね。服、看護師さんに緊急借りたの」

「…………」
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