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セルフヌード
第6章 最愛






 眠らされる間際、産婦人科病棟の医師が笑顔で美優に下した審判。

 医師の顔を踏み倒してやりたくなった。



 いつ毒が入り込んだのだ。

 良にも母親にも、身篭れない女の顔を貫いてゆくはずだった。


 事実、着床を望んだ時期は、一度として叶わなかった。望まなくなった途端これだ。


「ごめん……違うの、私は……」

「その子、大事にしてあげてね」

「──……」

「ずっと側にいてあげて」



 美優こそなつみに側にいて欲しい。こうも離れられなくしておいて、今更、この女は美優を突き放すつもりか。


「お父さんは私だし」

「はいっ?!」

「聞こえるー?お父さんだよー」

「ちょっ……やめてよ!この子に聞こえてたらなつみ女装だって思われちゃうっ」

「やっぱり、産む気じゃん。その言いよう」

「あ、…………」


 良には黙って堕ろしてしまいたい。

 医師がなつみに話してさえなければ、堕ろせたのに。


 美優に、腹の中の生命は摘めない。


 どれだけの責め苦の上に産み落とされた人間も、いつか愛される嚮後を得る。なくてはならない人になる。



 なつみの母親が、彼女自身にも隠していたことを知ってしまった。



 美優が良に植えつけられたものを潰せば、きっと最愛の人を否定することに繋がる。
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