この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
セルフヌード
第6章 最愛
眠らされる間際、産婦人科病棟の医師が笑顔で美優に下した審判。
医師の顔を踏み倒してやりたくなった。
いつ毒が入り込んだのだ。
良にも母親にも、身篭れない女の顔を貫いてゆくはずだった。
事実、着床を望んだ時期は、一度として叶わなかった。望まなくなった途端これだ。
「ごめん……違うの、私は……」
「その子、大事にしてあげてね」
「──……」
「ずっと側にいてあげて」
美優こそなつみに側にいて欲しい。こうも離れられなくしておいて、今更、この女は美優を突き放すつもりか。
「お父さんは私だし」
「はいっ?!」
「聞こえるー?お父さんだよー」
「ちょっ……やめてよ!この子に聞こえてたらなつみ女装だって思われちゃうっ」
「やっぱり、産む気じゃん。その言いよう」
「あ、…………」
良には黙って堕ろしてしまいたい。
医師がなつみに話してさえなければ、堕ろせたのに。
美優に、腹の中の生命は摘めない。
どれだけの責め苦の上に産み落とされた人間も、いつか愛される嚮後を得る。なくてはならない人になる。
なつみの母親が、彼女自身にも隠していたことを知ってしまった。
美優が良に植えつけられたものを潰せば、きっと最愛の人を否定することに繋がる。