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セルフヌード
第6章 最愛







 駅から歩いてデパートに寄り、石畳の公園へ入っていった。

 美優はなつみと女神の像が日差しを弾く噴水の縁に並んで、地下で買い集めてきたライスやら惣菜やらを広げていく。


 カフェやレストランを避けたのは、美優のつわりをなつみが気遣ったからだ。

 たまには太陽を浴びたい。

 美優は日焼けとは無縁の美人の理屈に甘えた。



「こっち向いて。ペットボトルは入らない方が良いかな。……ありがと。はい、撮るねー」


 なつみがカメラを構えると、途端に総身を不可視の愛撫が這う。

 アングルを変えて、美優という被写体の表情を調えて、光と影のマエストロにはもってこいの天候下、なつみはシャッターを切ってゆく。


 最初のデートを思い出す。

 美優は甚だ胡散臭がりながらなつみの話に耳を傾け、撮られる心地好さに戸惑い、彼女の好意を好意と受け取れないでいた。

 初めてのキス。あの頃は、美優は弱みを握られた哀れな女でしかなかった。



「やばいっ。可愛い美優やばいっ。私の腕がどうこうじゃなくて、美優がやばい」

「カメラマンはモデルをおだてるの上手いわよね」

「またそういうこと言う。私は本心しか言わないよ」


 なつみがカメラを片づけて、ペットボトルから紅茶を注ぐ。

 美優は箸や皿を配って、二人、揃って手を合わせた。

 すぐ近くのカップル達が、鳩に餌をやっていた。


 口許に、セロリのスティックが近づいてきた。


「美優、あーん」

「あー……ん……」

「食べたーっ。しかもスティック咥える時の美優ってエロい。もう一回やって良い?」

「私は鳩じゃないっ」
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