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セルフヌード
第6章 最愛
街でも移動の電車でも、なつみは美優の写真を撮った。一瞬一瞬を愛でている風でもあった。
プロ御用達の一眼レフカメラに、見事なポートレートが収まってゆく。
パリで人気のメイクアップアーティストの期間限定展示会を覗いて、ファッションビルを見て歩いた。
終始、はかなしごとが絶えない。美優は笑い、喜怒哀楽をフル稼働し、なつみは美優にところ構わずじゃれついた。
昼餉の重みもやわらぐ頃、美優はなつみを良と暮らす部屋に招いた。
「お邪魔しまーす。さすがっ、片付いてる」
「昼間は暇だもん。ヌード撮影ももうじき出来なくなるし、そしたらもっと片付くわ」
「安静にしてなくちゃダメでしょ。いっそ私が家政婦来ようか?」
美優はなつみをリビングに待たせ、ティーセットを準備した。朝、良が出掛けていってすぐにこしらえた力作も、トレイに乗せる。
「美優何それ!」
なつみの黒曜石の双眸が、ともすれば星光を弾いた具合にきららいた。
サンタクロースにでもまみえた顔だ。映画やドラマで芝居する可愛らしいアイドル達にも引けをとらないリアクションは、なつみだから様になる。
美優が運び込んできたもの、それは、ビスケットとアイシング、マシュマロで作ったお菓子の家だ。
「本物見たの初めて……待って可愛いよ。作ったとか言わないよね?」
「作ったの」
「うそー!うそでしょまじー?……窓とかちゃんとついてるし……どうやってるの?組み立ててる時、崩れたりしないの?」
「バースデーケーキはなつみが作ってくれたから。私は別のものでお祝いしたかったの」
美優はなつみがカメラとスマートフォン二台にお菓子の家を収める傍ら、カップに紅茶を準備する。
桃とバニラのハーモニーが、部屋を満たす。
二ヶ月前の誕生日、美優はそれまでの人生の中で最も幸せな時を過ごした。
なつみにどうすれば返せるか。本人に訊くのが早いと思って行動に出るや、なつみは家に訪ねたがった。
そこで思いついたのが、お菓子の家だ。