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セルフヌード
第6章 最愛



「二十代もあと一年かぁ……」

「ようこそ、三十代へ」

「まだだし。でも、美優見てたら前ほど身構えしないかな。あ、何か出てきた」


 屋根を皿に取り分けたところで、ビスケットの壁に包み紙の頭が覗いた。

 パステルピンクの包み紙は、赤いリボンがかけてある。

「お誕生日おめでとう。私のセンスでごめんね……」

「良いのにー。本当に、美優が一緒に過ごしてくれるだけで感無量なんだよ?美優を撮れるだけで至福なんだよ?見て良い?」


 出てきたのは、ゴールドの土台をじかに飾った磨りガラスのリボンに小さなハートが左右三つずつぶら下がったイヤリングだ。

 とろんとした光沢を帯び、淡い青を帯びたピンクのハートは大小アシンメトリーに仕上がっている。


「可愛い!ほんとに美優どうしたのっ?!思いっきり乙女になってるよっ。ちょっとこれ何、こんな石見たたことない──」



「不滅の愛」



 美優はポケットから同じイヤリングを取り出して、なつみの手元でつややくのよりは青みの強いハートを手のひらに乗せた。



「スミソナイト。そういう石言葉なんだって」

「──……」

「可愛いけど、ちょっとエロティックな艶がある。一目惚れしちゃった」

「美優……」



 美優の手から、軽らかな重みの硬質が離れていった。

 なつみの手が美優の耳許に近づき、しゃらんとした重みが耳朶についた。
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