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セルフヌード
第1章 秘密の快楽
* * * * * * *
鮮やかな光の凝縮したバックグラウンドサポートから、今日最後のモデルが下がった。
垢抜けた容姿、変幻自在の表情をとっかえひっかえ、今しがたまでファッション誌のカットを演じていた美少女に、モデル仲間達が群がってゆく。
うららな寒気たなびく日暮れ、常夏を装った乙女達が、華やかな見目に相応しい、華やかな笑い声を立てながら、社交辞令的な、あるいは愛嬌ある賛辞を交換して、スタッフらと声をかけ合う。
女が一人、足早にスタジオを立ち去った。
「あっ、嶋入さんが!」
「やーんっ、お姉様帰っちゃうの?」
「待って下さーいっ」
とりどり揃った花達が、女を追って、冷えた回廊へ飛び出す。
女はすぐ見つかった。
無邪気な美少女、美女達が、カメラアシスタントの女に甘ったるい声でまとわる。
「お疲れ様です、嶋入さん」
「お急ぎですかぁ?もしご都合良かったら、みほ、お姉様とご飯ご一緒して帰りたいです」
「この間、良い店が出来たらしいですよ。……っていうか、嶋入様となら、ささっとオトナな場所にご一緒しても……」
「こらっ、抜け駆けダメー。嶋入さんっ、あきの手料理、召し上がって下さるおつもりありませんかぁ?」
「ごめん」
憂いだ色香に掠れたメゾが、浮かれたさざめきを打ち切った。
とろけんばかりに甘い双眸、たわやかなだけにとどまらない、菓子であれば何かしらのスパイスを隠し味に含ませた感じの目が、微笑ともはにかみともつかない表情を浮かべた。
数分前まできびきびと機材を扱っていた繊手が、優しく優しく、少女の一人の片腕を引く。
きゃあぁぁっ、と、黄色い歓声が通路に響いた。
「私を誘ってくれるために、綺麗な足で走ってくれたの?胸が痛いよ。他の皆も。ほんと、ごめんね。今日はそういう気分じゃないの」
「えーっ」
「帰り道、気を付けて。星は乙女ほど輝けない。夜陰にさらわれないように。……またね、仔ウサギちゃん達」
女が颯爽と立ち去ってゆく。
感無量が無念もしのぐ、魂の抜け殻のごときモデル達の顔触れが残った。