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セルフヌード
第6章 最愛
* * * * * * *
深夜に訪ねた姪を見るや、広栄は煙たげな目をすぼめた。それからなつみを招き入れた。
「彼女とは、別れてきました」
美優の寝室に入ってから扉が開かれるまでの記録を消した録音機を、なつみは広栄の前に放った。
母親が出てきたのは計算外だった。計算外だった事故が、却ってなつみの味方になった。
「しばらく私も仕事で家を空けます。もし帰ってこられなくても、美優は、もう私とは無関係です」
「あの女に似て抜かりのないこと。それをわざわざ伝えに来たの?」
「…………」
あとひととき、あの女性の側にいようと思えばいられた。
きっと最後の誕生日。最後が、最高だった。
一年とまでは叶わなくても、せめて一ヶ月、美優と過ごして、美優を撮って、同じ生地から仕立てられた洋服で一緒に出掛けたり、彼女にもらったイヤリングを一度でも耳に揺らしてあの体温を抱き締めたかった。
空想を現実に持ち込むには、なつみは母親を愛しすぎていた。
広栄が悪魔だと罵る女がなつみを愛してくれたから、二十九年も生き伸びた。愛というものにも巡り逢えた。
母親の秘密を知ってしまった。
広栄が傷つかないように、なつみにも黙っていた事実。
なつみのためでもあったかも知れない。
真相を口にすれば、きっと広栄の思いは変わる。変わったところで、広栄は犯罪者とこの先何十年も連れ添うだけだ。あるいは訴訟して、結局、彼女が一人きりになるか。