この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
セルフヌード
第6章 最愛
明け方なつみからメールが届いて、二週間と少しが経った。
あの時、美優はすぐに返信をした。
追い立てられる勢いで打ったのに、返ってきたのはエラー報告。電話をかけても呼び出し音が続くばかりだ。
毎日公園近くの邸宅へ通った。一度も会えなかった。そうしている内にヨーロッパへ発つと聞いていた当日になった。
良は、十一ヶ月の休暇をとった。
そこまで暗い顔をしていた自覚はなかった。多分、美優が初産の不安を抱えているとでも思っているのだ。
どんな理屈を並べ立てたのか、会社側は良を認めた。何割かは有給休暇にまでなったらしい。
良は毎日美優につきっきりで、毎日美優を笑わせようと、半ば躍起になっている。
美優は、良の優しさに応えたかった。だのに笑おうとすればするほど素っ気なくなる。あれだけ好きだった良の匂いも、ごつごつした胸板も、美優に何の感慨も与えない。
たえの一件は収まった。
なつみがどんな気持ちでたえにあんな嘘をついたか。美優は考え、嘘を倣った。美優が事実を打ち明けたところで、誰一人幸せになれまい。
良の手前、美優が身篭ったと知った途端、昔と同じように接してくれるようになったはるこにも、過度の友情が自分を血迷わせたのだと言って反省している態度をとった。