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セルフヌード
第6章 最愛
良は、身重の女を病人か怪我人とでも考えているのだ。
ブルーライトが害だからというのを理由に、美優からスマートフォンを取り上げた。
DVDは観せてくれても、テレビは禁ずる。何が放送されるか分からないものをつけて、万が一にも身体にショックが起きてはいけないからだ。
家事のほとんどを良がして、時たまたえが訪ねてきては、美優の機嫌をとりながら、良の仕事を手伝った。
美優は、養鶏場の鶏だ。いつでも鍵の外せる鳥籠は、開くことない柵になった。
良もたえも、それから知人や親戚も、美優の腹の中にあるものを、喉から手が出るほど欲しがっている。美優の人格を失念するほど、美優を腫れ物同然に扱う。
美優は、容れ物だ。
こんなものを宿したくて宿したのではない。
罰だ。いじけてばかりいた罰。
美優も、いつしか腹を蹴るようになった異物も、ある日突然消えてしまえれば良いのに。
良は、なつみのことを話題にもしなくなっていた。
計算高いメゾの声が、今でも美優の耳を呪う。
その子、大事にしてあげてね。
ずっと側にいてあげて。
さぞ大切にされていた。だが、ずっと側にはいられなかった。
なつみは、きっと美優と美優の腹の中の生命を、彼女ら母娘に重ねていたのだ。
美優への、最後の仕打ち。
さんざん酷い雑言を浴びせ、わがままばかりぶつけていた。
なつみは全く気にしない顔で、美優をお姫様か何かのように扱っていたが、こんな方法で復讐したのだ。