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セルフヌード
第6章 最愛
いつだったかなつみが話していた。
フリルやレースを好むのは、女を誇りにしているからではない。女に生まれた違和感を、浮かれた洋服に隠して気散じしているだけだ、と。
美人の奇抜な発想が、今なら共感(わか)る。
女の身体に備わるものは、余計と不備とが多すぎる。
実用性のない、装飾的なものばかり。生殖に紐づくり機能だけは精巧だ。
こうした肉体を持って生まれた瞬間に、自分のために生命を使うことを戒められる。鍛えたところでたかが知れた体力も、男に比べて薄い皮膚、肉叢が、女を檻にとりこめる。
美優の最愛の人は、よりによって、女の秘境をなぶられていた。
最後にデートしたあの日、なつみが生まれてちょうど二十九年目のあの日も、美優が少し目を逸らす隙に、身体のどこかしらを庇うように押さえていた。半分以上は美優の所為だ。
なつみは、今でも美優を覚えてくれているのか。
行動を制限された美優には、恋人の安否も確かめられない。
たえに見咎められた夜、なつみは寝室を出て行く間際、美優の手をほんの一瞬だけ握った。
あの手を、離すべきではなかった。