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セルフヌード
第7章 喪失という残酷
「…………」
「疲れてんのか?」
「…………」
「仕事戻ってから、美優に家事押しつけて、咲希(さき)のことも見させっぱなしだもんな」
「──……」
良が寝台を抜け出ていった。
美優は一人分の体温をなくした掛け布団を握って、摯実な声音に耳を傾けていた。
「なぁ、美優」
「……ごめんね」
最後に他人と身体を重ねてから、一年が経とうとしていた。
身重の間、良は美優を抱かなかった。
なつみとここで寝たのが最後だ。
忘れもしない、水無月最初の水曜日。一人娘を産んだ潤みは、それから、他の異物を一切受け入れていない。
「エアコンつけるから、脱いでくれねぇ?」
「何で?」
「美優は、寝てて良いから。さすがに溜まってて、抜きてぇんだ」
「…………」
美優は横になったまま、寝間着を脱いで下着を外す。
衣擦れの音に耳を傾けながら、今度こそ寝具に潜って目蓋を下ろした。
エアコンが部屋を満たす頃、美優を束の間まどろみにとりこんでいた掛け布団が除かれた。
美優は、眠った振りを決め込む。
良の喘ぎ声と淫靡な水温、男の匂いが美優を包んだ。おりふし身体を湿った指先が滑る。