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セルフヌード
第7章 喪失という残酷
姉妹がいた。
姉は妹を慈しみ、物心ついてまもなかった妹は、当然のように姉を慕った。
何をするにも一緒だった。
両親は姉妹を平等に愛し、特にいとけなかった妹は、特別に世話を焼いた。長女と手をとり合って、幼い次女を慈しんだのだ。
ある夏、一家は祭りに出かけた。
妹は煌びやかな宝石の屋台に足をとめた。樹脂やガラスから出来た子供用の装飾品は、幼い双眸に果てなく広がる夢を見せた。
ムーンストーンだわ。
姉が言った。
本で見たことがあるの。好きな人に贈ると、その人も幸せになれる石なんですって。無限の可能性を秘めた石。それに強いの。月の光で浄化すれば、何度でも力をくれるんですって。
妹は両親に白い石のリングをせがんだ。
一家は笑顔に溢れる夜を過ごした。
翌朝、姉の枕元には白い石のリングがあった。妹は姉に贈るために、紛い物のムーンストーンを欲しがったのだ。姉妹は子供騙しの玩具を本物だと信じていた。