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セルフヌード
第7章 喪失という残酷
こんなろくでなしのために、なつみは自分を追いつめていた。
親は自ら選べない。
咲希が美優のような女から産まれ落ちたのと同様、なつみはこんな女を遺したような母親を持った。そして隣で無言を貫いている男を父に。
こんなろくでなしのために、想い慕った母親が被害者だったと知っても尚、事実に蓋をし続けたのだ。広栄が孤独にならないように。
「貴女を抱き締めて、……慰めてあげたいところだけどね」
「ふざけな──」
「出来ないの」
「…………」
「昨年の誕生日、……」
夜、あの子が私を訪ねてきたわ。
「…………」
「貴女に一切触れないよう、探すこともするなと言ってきたの。別れたから、無関係だと」
「うそ……」
初めからそのつもりだったのだ。
勘違いもいいところだ。
美優はあの日、明日も明後日もなつみに会えるつもりでいた。離れねばならないのはほんの少しの間だけだと。