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セルフヌード
第7章 喪失という残酷
* * * * * * *
今年もまた、甘辛い風が街をとり巻く季節が訪った。
春は嫌いだ。
二年前、セルフヌードという唯一の楽しみをおびやかす美人にさんざん振り回されて、逃げられて、次の春は家庭の奴隷に永久就職してしまった。
なつみの叔母と実父に会って、一年が経った。
美優の腹を破り抜けた人間も一歳になり、良やたえが選んできたいとけない洋服が様になる。
顔の感じは美優に似ている。良に似ていたところで大した違いはなかったろうが、この人間も、いつか美優のようにひねくれるのか。
四月だ。四月も、次の五月も、六月が怖い。
底知れない罪悪感が美優をのみ込む。
この季節に限っては、美優はさしずめ泥梨にいる丸裸の罪人だ。
「ただいま」
「お帰り」
「疲れたー。飯食お、飯。…………これだけ?」
「ご飯炊いてるよ」
「しかもインスタントじゃないか」
「良いじゃない。こっちの方が無駄も出ないし」
キッチンへ移り、美優は箸や飲み物の準備を始める。
ビニールパックのラップを除き、冷えたものは電子レンジに放り込む。
「咲希も泣かなくなったんだ、たまには手の込んだもの作ってくれよ」
「そういうのは良くんが作るじゃない。週末」
「何かいやなことあるのか?美優、咲希を産んでから元気ないぞ」
「…………」
「悩みがあるなら、──」
「やめて!!」
まとわってきた腕にぞっとした。
良の腕を振り払い、美優は電子レンジを覗く。
「…………。心配してんだぞ」
「…………」