この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
セルフヌード
第7章 喪失という残酷
良が悪いわけではない。口に出せればどれだけ楽になれることか。
されど美優は抜け出せない。良の腕から抜け出すことは出来るのに、束の間恋人と呼び合った人との思い出に、いつまでも閉じこもっている。
なつみの言った通りかも知れない。
初めてのデートで彼女が冗談だと流したこと。
男にとって女の配偶者など、手取りだけで雇える夜の相手も家事もこなす家政婦だ。どちらも務まらなくなった美優は、良がもっと短気であれば、今頃解雇になっていた。
「……彼女のこと」
「は?」
「何で黙ってたの。何で探させてくれなかったの」
「何だよ、まだ引きずってんのか」
息を引き取ったのは先進国の病院だ。だのに遺体は見つからなかったと聞く。
一度だけ思い当たる編集部に片っ端から問い合わせた。
だが、広栄の話していた通り、行方不明として片づけられ、葬儀も行われなかったという。
なつみにとっては幸いだったのかも知れない。
美しい彼女が隠していたもの。
さんざっぱら見て見ぬ振りをしておきながら、最後に神が気まぐれでも起こしたのだ。