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セルフヌード
第7章 喪失という残酷




 良が悪いわけではない。口に出せればどれだけ楽になれることか。

 されど美優は抜け出せない。良の腕から抜け出すことは出来るのに、束の間恋人と呼び合った人との思い出に、いつまでも閉じこもっている。



 なつみの言った通りかも知れない。

 初めてのデートで彼女が冗談だと流したこと。

 男にとって女の配偶者など、手取りだけで雇える夜の相手も家事もこなす家政婦だ。どちらも務まらなくなった美優は、良がもっと短気であれば、今頃解雇になっていた。


「……彼女のこと」

「は?」

「何で黙ってたの。何で探させてくれなかったの」

「何だよ、まだ引きずってんのか」


 息を引き取ったのは先進国の病院だ。だのに遺体は見つからなかったと聞く。

 一度だけ思い当たる編集部に片っ端から問い合わせた。

 だが、広栄の話していた通り、行方不明として片づけられ、葬儀も行われなかったという。


 なつみにとっては幸いだったのかも知れない。

 美しい彼女が隠していたもの。

 さんざっぱら見て見ぬ振りをしておきながら、最後に神が気まぐれでも起こしたのだ。
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