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セルフヌード
第7章 喪失という残酷
* * * * * * *
ゴールデンウィーク特有の空気が町を覆った。
良が咲希の散歩に出掛けていくと、美優は部屋の掃除を始めた。
一人の時間が一番楽だ。特に、何かしている間は気が紛れる。
それでも休息はほんのひとときだけ。二時間も経たない内に扉の開く音がした。
「美優っ」
出かけ際はなかった袋が、良の腕に提げられてあった。
「土産」
「有難う」
袋は、はるこの勤める書店のそれだ。
二年前の今頃からぎくしゃくするようになった友人の顔を思い起こして、美優は袋を覗く。
「…──!!」
「驚いたか?美優そういうの好きだと思って」
「…………」
いつかの癇癪が美優の中で目を覚ましかけた。
だが、良が美優に押しつけた写真集は、彼に投げつけるにはあまりに烈しい衝撃を、美優に与えた。
『記憶』──…。
撮影、稲田総子。
美優は寝室に駆け込んで、憑かれたように袋を剥がした。
「…………」