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セルフヌード
第7章 喪失という残酷
表紙を飾っていたのは、総子の写真ではなかった。
きららくしずくが散りばめられた、赤とピンクのグラデーションをまとった荊。黒髪の少女が背を向けて、緑の纏縛の中にいた。
色彩を識別できるのは、明るい場所で撮影されていたからではない。しずく、おそらくガラスか水晶だ、それらが撮影者の視界を補う光を弾き、荊と少女をほのかに浮かび上がらせたのだ。
美優の胸が、久しいような衝動をきたす。それこそ荊の中で眠っていた姫君が、キスで呼び起こされるように。
「…………」
最初のページは、裸体の少女に鷲達がまといつき、白い肉叢を抉っていた。嘴が皮膚の割れ目に影を刻み、けだし悲痛に喘ぐ少女の顔は、無に覆われていた。
次のページは少女達が腕を絡め合っていた。茶けた花びらの中で一つになり、白い二つの肉体が、互いの女の秘境を遮蔽している。
足枷に繋がれ、折れた十字架に跪く少女。
割れた鏡に映る少女。断片的に散らばる裸体は、鎖のようなものが巻きついている。
淫靡な突起のある木馬に跨り両手首を吊られた少女。
クリスタルの城に眠る少女。…………
めくるめく光と闇、禁足された少女の世界は、美優を得も言われぬ焦燥にとりこみ、新たな喪失の晦冥に引きずり込んでいった。