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セルフヌード
第7章 喪失という残酷
『明日』の翌週、精力的な風景写真家、総子が次に発表したのは、最も彼女らしい絵が表紙を飾った写真集だ。
『君へ』──…。
ティーカップが光を満たし、双子の山を描いた炫耀が銀白色の水面に浮かんでいた。
「…………」
総子らしいのは、被写体が無機物であるところだけだ。
美優は今までにない焦燥に駆られながら、午前十時半の寝室で、真新しい表紙を開いた。
見覚えのある風景が広がっていた。
黄昏の住宅街。
なつみの私宅に通えていたくらいだ。総子の住まいもさして遠くないのだろう。橙色と不思議な青のグラデーションが、ショッピングモールの近辺を実際より甚だ幽玄に見せていた。
美優が次のページをめくると、一面を緑が覆い尽くしていた。
遠くに白い建物が見え、群青とパステルピンクの花がそよいでいる。
建物は、美優がなつみと初めてランチをとったところだ。二年前の最初のデートで、なつみは迷わず美優をあすこまで連れていった。総子とテーブルを挟んだこともあるのかも知れない。