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セルフヌード
第8章 *最終章*セルフヌード
途中、美優は自分のバッグから、なつみにスマートフォンを抜かせた。
良を拒み続けた身体。良人の撮ったポートレートで、囚人同然にすすけていた美優の容姿。
今すぐ確かめたかった。
「──……。はい」
唯一自由に動かせる首を伸ばして、美優はなつみがカメラアプリで撮ったばかりの写真を覗く。
「っ…………」
「どうしたの?あ、私まだ本調子じゃない?」
「違うのっ……」
橙と薄めたグレーのグラデーション。どこからかたなびく群青と、そして荊にとりこめられた白いもの。
いつだったか赤い糸になつみと繋がれて撮られた時の、愛念と希望に潤う花嫁の姿がそこにはあった。
茶けた花びらが美優を染めた。
まるで『記憶』の二ページ目だ。無数の花びらの死骸にまみれて、なつみが美優に戯れながら、新たなカットをカメラに収める。