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セルフヌード
第8章 *最終章*セルフヌード
突然、乳児の泣き叫ぶ声が美優の鼓膜をおどかした。
「待って美優。そんなカッコじゃ、……」
腰を浮かした美優を制して、なつみが寝具に駆け寄った。
「よしよし、お嬢様ご機嫌斜め?美優に似て可愛いねー。お母さん着替えに時間かかるから、ちょっと我慢してね」
「──……」
「美優、どうしたら良い?」
「ご飯かも……ごめん、……」
「そっか、いつの間にかこんな時間。買ってくるよ。何食べる?」
「じゃあ私も──」
たった今まで淫らごとに耽っていた恋人は、得意の誉め殺しですっかり黙らせた咲希を寝具に戻すや、バニティーケースを引っ張り出した。
「行ってくるから、お姫様はゆっくりしてて」
久しいフレグランスがほのかに染みた部屋に、母娘ぽつんと取り残された。
良に宛ててメールを打つと、美優は自分によく似た娘を瞥見した。
最愛の人に背いた結果。愛する人と一つになっている間も、耳障りな癇癪で母親の幸福を台なしにする夾雑物。
咲希は、愛らしさの欠片もなかった。