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セルフヌード
第8章 *最終章*セルフヌード


「ありがと」


 白い薔薇の花束が、女の腕からなつみの手許に渡っていった。


 蒸せるように甘い匂いが美優に注ぐ。



 いつかの夕まぐれがデジャブした。

 あの時は、なつみはお伽話にまみえるような皇子の装束に身を包んでいた。


 今は、真逆だ。

 美優の好きな、姫君らしからぬ人となりの姫君が、同じ姿勢をとっていた。





「結婚して」



「っ…………」



「ていうか、しよ」



「…………、そ、んな…………」



 ありえない。

 ありえない予感は的中した。


 なつみの語調は、昔、彼女が美優にデートを持ちかけた時に似通っていた。


 否、違う。


 黙示と引き換えだったあの時より、ずっと優しい。ずっと切ない。
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