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セルフヌード
第8章 *最終章*セルフヌード
豪邸住まいの夜は良い。
幼い子供を抱えていても、音漏れの心配をしなくて済む。
なつみのカメラにさんざっぱらとりこめられて、今夜も美優は甘だるい肢体を寝台に投げ出し、閨事の余韻に浸っていた。
テラスに続くガラス張りの扉の向こうに、とびきりの星空が広がっている。
広い宇宙にまるで二人きりでいるようだ。
鏡台に視線を巡らすと、姫君のようなルームウェアでめかし込んだパートナーが、さして古くないポートレートをチェックしていた。
二つの寝台に挟まれたチェストは、九年来の時間を未だ鮮やかに残したフォトフレームの定位置。
極彩色のブリザードフラワーの流れる淡いピンク色のドレスの花嫁と、白いマーメイドラインのドレスの花嫁が、睦まじやかに微笑んでいた。
「苗字、やっぱり美優のもらえば良かったかな」
「なつみはダメだよ。実名でお仕事してきたのに、ややこしくなっちゃう。それなら私が──」
「それはいや」
「──……」
美優の美しい配偶者は、世間一般の結婚にまつわる風潮に、やはり反感を持っていた。
愛する人は所有物ではない。そう言って、美優に自分の苗字を名乗らせなかった。美優が独身時代の職場に復帰したいと言い出した時も、渋っても反対まではしなかった。働かせたくなかったけれど、とだけ言った。