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セルフヌード
第2章 美しさという暴力
なつみが車を停めたのは、ある駐車場の一角だ。
美優はなつみに手をとられ、縦に長い豆腐型の建物の脇を昇った。
「花蓮いる?」
「おっ、なつみー!」
白熱灯のぼやけた明滅の中に並んでいた、二つの扉の一方から、女が一人飛び出してきた。
オールバックの前髪に、後頭部でまとめたスパイラルパーマの髪。ショッキングピンクのカットソーにレギンスという格好が、女の細身をいやが上にも強調していた。
「セフレ?」
「いきなりそういうこと言う?人聞き悪いじゃん。あ、違うからね、みゆさん。私そういう人じゃないから」
…………思いっきりそういう人だと思っていました。
片手を痛いくらい繋がれて、美優はなつみの同情を誘いたがらんばかりの顔を睨んだ。
「ごめんごめん。この間もみほちゃんの担当をしてね、どっちがなつみと多く寝たかって、ゆかちゃんと喧嘩になったんだって私に愚──…」
「もう黙って今日だけは黙って。……花蓮?二人は妄想にとり憑かれたの私は無罪」
なつみの人差し指の腹が、昼夜をわきまえない女の唇に封を被せた。
「彼女は、小木曾美優さん。多分、家も近所」
美優は肩を押し出されながら、なつみに振り向く。
「なつみ、嘘──」
「ほんとほんと。みゆさん気付かなかった?あ、こちら、木之原花蓮(きのはらかれん)ね。スタイリスト」
「…………」
「そういうことだから、花蓮。美優さんのお化粧頼むわ。美人に憧れている可哀想な人なんだ。それは私には敵わないかもだけど、こんなに可愛いのにね」
「分かった。美人に憧れている可哀想な人ね。……美優さん、任せて下さい。なつみは性格に問題あるけど、貴女なら少し手を加えれば、こんなタラシよりずっとイイ女になります」
「花蓮ひと言多いー」
「…………」
美優は、なつみの聞き捨てならない言動に、自失しなくなっていた。
昨日は、些細なところでも腹を立てていたのに。