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セルフヌード
第2章 美しさという暴力
「これ……」
「ビューラーはご自分で。アイラッシュはお使いになったことがありますか?」
「いいえ」
美優はビューラーを受け取って、睫毛を癖づけていく。
未知のアイテムが差し出されてきた。
ドールの双眸に使われるような、人工的な濃く長い、睫毛。
そう言えばなつみは使っている感じがしない。天然であれか。これだから美人は嫌味だ。
「そう、接着剤は上からつけると良いんです。装着も。リアル睫毛と目蓋の間に差し込むように貼りつけて、三秒ほど軽く押さえて下さい」
「…………。…──っ」
美優の喉が、今度こそ悲鳴を上げかけた。
くっきり開いた目の感じは、左右対象。長い間のコンプレックスは夢ででもあったように払拭されて、美優は、眼球に慣れない外気がしみるような、締まりのあるだるさに戸惑う。
陰気な顔つきはどこにもない。
明るい目許は、美優が最も煙たがっていた類の女達にありがちな光──…不可侵の炫耀に映えていた。