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セルフヌード
第2章 美しさという暴力


「みゆさん」


 美優の側に、なつみが音もなく膝をつく。

 いつだったかテレビをつけた時、偶然流れていた生収録のミュージカルに、こんなシーンがあった気がする。

 プリンセスは、王子に優しく見上げられて、永久(とわ)の求愛を受けていた。



 なつみの強かな双眸が、深い清澄を湛えながら、美優を捕らえて切なくたゆむ。


「みゆさんの裸を初めて見た時、鳥肌が立った。……こんなに綺麗に笑う人、知らない、って。こんなに綺麗な心を収めている胸を持つ人を、知らなかった」

「あ、貴女、なんかに……そんな、こと……あんな写真で私の何が分かるのよ」

「全て」

「っ…………」

「今日のみゆさん、本当に綺麗。自慢のお姫様だよ。みゆさんは、さ、暗いし地味だし、面白いほどネガティブだけど、……それは、私みたいな美人が言っても説得力ないのは分かるよ。でも、そんなので背中まるめてちゃもったいないよ。バチがあたるよ。顔は気の持ちようにつくられる。自分のこと、大好きになるだけで、お化粧や表情って変わるものなの。自分のことが愛せなくて、愛される顔になりたいなんて、魔法少女でも捕まえて、願いしないと無理だよ。……」

「…………」



「なんて、今のはほとんどお母さんの口癖。私、世紀のおめでたを親に持つんだ」


「──……」



 合点がいった。この女の人となりが不道徳を極めているのは、親の教育が差し響いていたのか。
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