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セルフヌード
第2章 美しさという暴力
* * * * * * *
平穏に、淡々と過ぎゆく日常だった。
退屈な日々。かえがたい来し方。
たった一日で変わった。
偶然は偶然を引き寄せた。
なつみの私宅は、美優のほぼ毎日通りかかる豪邸だった。
買い出しに出かける夕まぐれ、千般のドラマを見かけてきた公園の近傍──…四季折々の自然が溢れ、桜の樹冠が垣根に覗く、優美な家だ。
どんな富豪が暮らしているのか、おりふし興味を惹かれてはいた。
手塩にかけて育てられてきた令嬢が、一番大きな部屋を与えられ、ゆかしい母と優しい父に、愛され無邪気に暮らしているのだ。
子供達が砂利を駆け回る。学校帰りのカップルが、滑り台の陰に隠れて影を重ねる。…………
幸福な一家に相応しい家は、美優にはとても眺めていられないドラマが見渡せる立地にあった。
富豪ではなかった。実家暮らしでもなかった。
だが、美優の暮らすマンションから徒歩十分ほど先のところにある邸宅は、なつみに似合った。
「立ち入ったこと、訊いて良い?」
白熱灯の空費もいいところだ、と、美しい住人が悪しざまに評価した廊下の最奥、物置部屋のようなところへ案内された。なつみは撮影器具やら家具やらを調えていた。