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セルフヌード
第2章 美しさという暴力
「この業界って、そんなに収入良いの?」
「前の持ち主が激安で譲ってくれただけ。フリーだし変動あるよ」
「そうなんだ」
にわかに視界がフィルターを変えた。
なつみが照明スイッチを離れた。
まるで映画の撮影セットだ。
美優の目前に、生活感とは無縁の部屋が仕上がっていた。
シフォンのバルーンカーテンに、レースのかかった花柄のソファ。床には極彩色の花びらが散り、発泡スチロールの雪が不思議な季節を物語る。
二人の女をとりこめるのは、漆黒と、金色をとかした桜色。スポットライトの可視光が、気体を染め上げていた。
「美優」
肩を、優艶な手のひらが滑っていった。
なつみの腕が美優の身体を引き寄せる。唇が、美優の口舌をキスで奪う。
「──……、……」
触れ合うだけの口づけだった。
薄く視界を開(ひら)けながら、美優は自分のジャケットが、肩を離れた気配を聞く。なつみの作業に従って、美優は両腕を上げて下着だけを肢体に残す。
ソックス、ストッキング、スカート──…常温の脱殻が足許に舞うと、美優は性的な部位のみを下着に隠して、なつみに手を引かれていった。