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セルフヌード
第2章 美しさという暴力






 四年前、駆け出しの写真家が『少女crater』という写真集を発表した。


 光と闇、少女と被虐。


 相反するものをひとところに収めた、かの写真集は、ともすれば禁書に葬られるような、きわどいカットがページを満たす。



 というのは、美優が昨夜、嶋入なつみという人物をインターネットで調べて拾った知識だ。


 少女達の傷を闇に閉ざした写真家は、……なつみは、何を思ってあの世界を描いたのか。

 美しいかなしみ。悲惨な悦び。



 なつみは美優にあの少女達を倣わせた。

 優雅なソファの真上には、鉄製のフックがとりつけてあった。前住人にいかなる嗜好があったのか、部屋は、壁や天井のあちこちに、いかがわしい想像のかきたてられるような仕掛けがあった。


 フックにロープがかかった。ロープに美優が繋がれた。
 端切れ一枚も身につけることを放棄した肉体を、赤い纏縛が吊り上げる。両腕が頭に持ち上がり、丘陵の麓を病的な蛇が圧迫をかけ、女のしとりを匂わす割れ目が開け、膝が天井を仰ぎ四十五度の角度を固めた。健康的な肉づきが、ロープの呵責に悲鳴を上げる。乳房ではない他のものになることを戒められた美優の二つの肉丘が、いつになく大胆に絞れ出た。…………
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